1.全身臓器の低灌流による症状
腎血流低下:乏尿,糸球体濾過率の低下,高窒素血症
骨格筋血流低下:嫌気的代謝の亢進,乳酸産生の亢進,易疲労感の増加,運動耐容能の低下
冠血流低下:心筋虚血,心機能低下
脳血流低下:記銘力低下,集中力減退,睡眠障害(SAS),意識障害(特に高齢者)
皮膚血流低下:末梢性チアノーゼ,冷感
2.全身臓器血流のうっ滞または体液貯留による症状
労作時息切れ,呼吸困難
浮腫,肝腫大,胸水
消化器症状(食思不振,悪心,腹部膨満感)
3.薬効動態,薬効への影響
腎血流低下:腎排泄性薬物の排泄障害(例:ジゴキシン),利尿薬の作用減弱
肝血流の低下,うっ血肝・薬物代謝遅延(例:リドカイン),消化管からの吸収障害

 軽症から中等症の慢性心不全では,神経体液因子の賦活化が代償的に働き臓器血流は維持されているが,心不全の進行により運動時の骨格筋血流の増加は制限される.また,重症の慢性心不全になると,各臓器の低灌流状態と血流のうっ滞に基づく種々の心不全徴候が顕在化する.表4に慢性心不全における末梢循環障
害の主な臨床的側面を示す.

 慢性心不全での末梢循環障害を客観的に評価することは,病態を理解する上では極めて重要であるが,その評価法の多くは侵襲度の高い観血法であり,特殊な装置や設備が必要であることも多く,目下の実臨床において簡便に施行可能な方法は限られている.したがって,末梢循環障害の結果として生じる各臓器機能障害をもってその評価とすることが中心となっている.
1 末梢循環障害の臨床的意義
表4 末梢循環障害の臨床的側面
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慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Treatment of Chronic Heart Failure(JCS 2010)