2 自覚症状,身体所見
 慢性心不全の主病態は,左房圧上昇・低心拍出量に基づく左心不全と,浮腫,肝腫大等の右心不全に大別され,これらに伴う症状・所見を診断する必要がある.

 左房圧上昇に伴う自覚症状としては,肺うっ血を原因とした呼吸困難感が主体となる.初期は安静時には無症状,労作時に軽度の息切れを自覚するのみであることも多い.また,進行例においても,安静が習慣となり,症状があることに気付かないことも少なくない.左心不全の進行につれて夜間の発作性呼吸困難,起座呼吸が出現する.身体所見として,Ⅲ音,Ⅳ音,肺野湿性ラ音を聴取する.

 低心拍出量の自覚症状は,全身倦怠感,頭痛等の神経症状,食思不振等,非特異的なものも多い.身体所見としては,四肢冷感,夜間尿,乏尿を認める.脈圧の低下もみられる.

 心不全により惹起される浮腫は,肝性浮腫,貧血,腎性浮腫等と鑑別する必要がある.心臓性浮腫は呼吸困難等の左心不全症状を伴うことが多い.浮腫に伴う体重増加は通常2~ 3 kgに達する.
Ⅰ 慢性心不全病態と診断 > 2 慢性心不全診断の実際 > 2 自覚症状,身体所見
次へ
慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Treatment of Chronic Heart Failure(JCS 2010)