慢性心不全患者において性交渉時の血行動態を測定した報告は皆無であるが,健常人および陳旧性心筋梗塞患者における検討では絶頂期の心拍数,血圧は両群で差がなく,心臓二重積(心拍数×血圧)は,安静時のおよそ3倍に達するとされる156).運動強度でいうとおよそsingle Master 負荷試験に相当することから,不整脈の誘発,負荷後の過度の息切れ,疲労感なしにsingle Master を行い得れば性交渉は可能と考えられる.しかし心拍数,血圧の反応は年齢や重症度よりもむしろ個体差や性行為時の状況によるところが大きい.一方で,心不全患者の60~ 70%が性的機能不全(ED : Erectile dysfunction)を有していると報告されている157).性的機能改善薬であるPhosphodiesterase 5(PDE5)阻害薬は,血管拡張作用を有し,慢性心不全の運動耐容能改善効果も報告されているが158),安全性のデータが乏しく,現時点でのED治療としての投与は推奨されない.
11 性生活
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慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Treatment of Chronic Heart Failure(JCS 2010)